早野元詞
慶應義塾大学医学部特任講師, UJA理事, Cheiron Initiative理事, ASG-Keio代表理事
HFSP Long-Term Fellowship受賞者
発表演題:人との繋がりで老化の基礎研究を社会に届ける
老化現象の中でもウェルナー症候群などの早老症で生じる老化速度や老化開始タイミング変化の分子機序に興味を持っている。2020年において生命科学と医学が飛躍的に連動し、研究室での発見から臨床へ届くまでのパスが確立されてきている。
我々が用いているICEマウスは、DNA損傷がゲノムにヒストンやDNAへエピゲノム変化として記憶され、老化が加速するモデルである。I-PpoIと呼ばれるエンドヌクレースによってDNA損傷が一過的に誘導され、様々な老化様表現系が加速されると共にエピゲノム変化が誘導される。自然老化マウスにおいても同様の変化が観察されるため、エピゲノム編集は一つのアプローチ手法である一方で、加齢と共に変化する臓器の弾性変化に興味を持っている。これまで組織弾性に関する薬剤投与によって筋力及び記憶の改善が見られている。さらに非侵襲的老化制御法として、非視覚系光受容体に着目している。OPN5は380nmによって活性化されるGPCRであり加齢マウスにおいて、光刺激によって記憶が改善される。今後は植物や海洋生物なども加え、老化の多様性から応用までを考える必要があるだろう。
国際性、分野融合、実現可能性と臨床への応用を度外視した研究がHuman Frontier Science Programを成功へ導いている。次世代型研究においては、これらを社会実装する際に、マーケット、開発、導出手法を考慮すると共に、実装後の社会変容やインパクトを想像する必要がある。これらについて老化研究を例に議論したい。
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