石原純
Postdoc/assistant professor, Univ. Chicago/Imperial College London
発表演題: 癌免疫療法の副作用を下げて、薬効をあげる
癌免疫療法は今、最も期待されている癌の治療法である。多くの癌種に対して効果が報告されている一方で、現在使用が承認されているオブジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬でさえ、薬効が認められる患者が全体の10-20%である。また副作用も高く、ほぼ全員が何らかの副作用を訴え、35%以上の患者が副作用で治療を断念している。我々は、癌血管に特異的に露出するコラーゲンを発見し、そのコラーゲンに癌免疫療法薬を結合させればこれらの問題が解決できると仮説をたてた。そこで我々は簡単なタンパク質配列の組み替えによって、癌免疫療法の治療薬を送達する技術を開発した。これはバイオマテリアルなどを使わず、生体内由来配列だけを用いて改変をしたので、簡易で免疫拒絶のリスクが少ない。また、臨床で用いられている静脈注射から癌を狙うことができる。我々はこの技術によりチェックポイント阻害抗体の副作用を下げ、薬効をあげることに成功した。免疫細胞は癌周囲において特異的に活性化され、正常組織においては活性化されていなかった。さらに従来の癌免疫療法が効かない癌モデルに対しても高い薬効を認めた。この技術は高い臨床応用可能性があると信じ、起業して臨床開発を始めている。
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